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緩和ケアチームの基準

本基準は、わが国の病院内で活動するすべての緩和ケアチームの活動の方向性を明確化することを目的とし、デルファイ変法を用いて作成したものである。

2008年3月作成

緩和ケアチームの基準

◆本基準は、わが国の病院内で活動する緩和ケアチームの目指すべきものを示す。

◆緩和ケアは、本来がん患者のみでなく、すべての生命が脅かされる疾患を持つ患者が対象であるが、本基準はわが国の現状に鑑み、がん患者を中心に対応する緩和ケアチームを想定して作成した。しかしながら、がん以外の患者の緩和ケアを行う緩和ケアチームに適用することを妨げるものではない。

◆本基準は、緩和ケアチームが病院内で行うコンサルテーション活動に限定し、地域で行うコンサルテーション活動については言及しないこととした。なぜなら、今後わが国では緩和ケアにおける地域コンサルテーションが行われていくものと推測されるが、現在地域コンサルテーションが活発に行われている地域や地域コンサルテーションに精通した者がほとんどいないこと、病院内と地域でのコンサルテーション活動ではその内容が異なると予測されることから、その2つを含めた基準の作成は難しいと考えられたためである。

<本基準における用語の定義>
緩和ケア
生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族の生活の質(QOL)を改善するための方策で、疼痛および身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題の早期かつ確実な診断・早期治療によって、苦痛の予防と軽減を図ることを目標とする。(WHOの定義)

緩和ケアチームによるコンサルテーション
病院内に勤務する医療従事者が抱えている緩和ケアに関する困難な問題を、日常業務の中でより効果的に解決できるようにするために、緩和ケアチームが病院内に勤務する医療従事者に対して行う支援のこと。

直接ケア
緩和ケアチームが直接患者・家族と会い、診療・ケア等を行うこと。

<構造>
Ⅰ.理念・基本方針
1. 理念
緩和ケアチームは、患者・家族のQOLを向上させるために、緩和ケアに関する専門的な臨床知識・技術により、病院内の医療従事者への教育・支援および患者・家族への直接ケアを行う。
2. 基本方針
1) 病院内で勤務する医療従事者を対象としたコンサルテーションを行う。
2) 依頼元の医療従事者と合意のうえ、必要に応じて患者・家族に直接ケアを行う。
3) 患者・家族だけでなく、病院の特性や医療従事者のニーズに合わせて活動する。
4) 緩和ケアチーム内および依頼元の医療従事者と話し合いのうえ、患者・家族のケア方針を決定する。
Ⅱ.ケアの提供体制
1. 職種の配置
以下の職種を含むか、必要に応じて協働できる体制が望ましい。
1) 身体症状の緩和に習熟した医師
2) 精神症状の緩和に習熟した医師
3) 緩和ケア領域での専門/認定資格を持つ看護師
4) 緩和ケアに習熟した薬剤師
5) 医療ソーシャルワーカー
6) 心理士
7) リハビリテーションに関する医療従事者(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)
8) 管理栄養士
9) その他、患者・家族のQOL向上に資する職種
2. 活動体制の整備
1) 病院内で緩和ケアチームが組織上、明確に位置づけられるようにする。
2) 病院内に緩和ケアチームの理念・基本方針を開示する。
3) 緩和ケアチームの体制(病院内での位置づけ、構成要員、活動時間、活動内容など)について、病院内の医療従事者および患者・家族に周知する。
4) 緩和ケアチームへの依頼方法(依頼できる職種、手段など)について、病院内の医療従事者に周知する。
5) 依頼に迅速に対応できる体制を取る。
<プロセス>
Ⅲ.活動内容
1. 臨床活動
1) 主として症状緩和、精神的支援、意思決定の支援、療養場所の調整、家族への支援、終末期の諸問題への対応、医療従事者の支援を行う。
2) 依頼元の医療従事者からの情報、患者の診察、家族との面談、診療録、種々の検査結果などに基づいて患者・家族を多面的にアセスメントし、推奨および直接ケアを行う。
3) アセスメントは、可能な限り標準化されたツールを用いて行う。
4) 推奨および直接ケアは患者・家族の個別性に配慮し、可能な限り診療ガイドラインに基づいて行う。
5) アセスメント/推奨/直接ケアの内容は、診療録等に記載する。
6) 推奨/直接ケアの結果についてフォローアップし、見直しを行う。
7) 直接ケアを行う場合、その内容について患者・家族に説明し同意を得る。
8) 必要に応じて、依頼元の医療従事者とカンファレンスを持つ。
9) 定期的にカンファレンスを行うなど、緩和ケアチーム内でのコミュニケーションを図る。
2. リソースの整備
1) 必要に応じて外来および病棟に、その外来あるいは病棟の緩和ケアを担当する看護師を置く。
2) 病院内に緩和ケアマニュアルを整備する。
3) 地域の緩和ケア関連機関(緩和ケア病棟、診療所、訪問看護ステーション、薬局など)との関係を構築し、協働できる体制を整備する。
3. 教育活動
1) 病院内の医療従事者に対し、日々の臨床活動を通して緩和ケアに関する教育を行う。
2) 病院内の医療従事者に対し、緩和ケアに関する勉強会・講習会等を定期的に行う。
3) 入院・外来通院中の患者・家族に対し、緩和ケアに関する教育・啓発活動を行う。
Ⅳ.ケアの質の評価と改善
1. 緩和ケアチーム内で定期的に症例検討・カンファレンスを行い、依頼された患者に対する活動を評価・改善する。
2. 依頼された患者および緩和ケアチームの活動に関する情報(疾患名、依頼理由、依頼数など)を収集・分析し、緩和ケアチームの活動を評価する。
3. 緩和ケアチームのメンバーは、最新の緩和ケアに関する学習を積極的に行う。

Sasahara T, Kizawa Y, Morita T et al. Development of a Standard for Hospital-based Palliative Care Consultation Teams Using a Modified Delphi Method.
J Pain Symptom Manage. in press.

なお2009年6月現在、日本緩和医療学会が本基準の承認を検討しているところである。

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