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大学医学部・医科大学卒前教育における緩和ケア学習到達目標

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大学医学部・医科大学卒前教育における 緩和ケア学習到達目標 (2010年3月)

平成23年度厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業
『緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究』班
研究代表者:木澤 義之

【はじめに】
2007年に施行されたがん対策基本法の中で,療養生活の維持向上のために,すべてのがん患者に緩和ケアが適切に導入されることの重要性が述べられている.しかしながら,わが国では,緩和ケアの普及が未だ十分ではなく,この問題の解決のためには、卒前・卒後の教育体制の整備が必要であると考えられている。
卒業前の教育体制整備の第一歩としては、まず医学生が卒業時点で習得するべき緩和ケアに関する能力を明確化する必要があると考え、本研究では、関係する専門家の意見を集約し合意を形成するために医学領域で広く使用されているデルファイ変法を用いて大学医学部・医科大学卒前教育における緩和ケアの学習到達目標を作成した。一般的にカリキュラムは学習目標―方略(方法)―評価で構成されるものであるが、本研究ではそのうち学習到達目標、即ち医学部卒業時点で到達していることが望ましい緩和ケアに関する学習到達目標を作成した。
【対象者】
 大学医学部・医科大学の医学生を対象者として想定した。
【使用方法】
 本到達目標案は、医学生が全ての授業や実習などを通じて卒業時点で到達しているべき(言い換えると臨床研修開始前に持っているべき)緩和ケアに関する能力を記述したものである。したがってここに記述する内容は緩和ケアの授業や実習などで教えるべき項目を記述したものではない。従って、この到達目標を習得するために、卒前の大学医学部・医科大学カリキュラムを包括的に再構成する必要がある。また、今後各到達目標を達成するために、どのように実習や授業を行い(方略)、それをどのように評価するか(評価)についても実践と研究が必要である。
 学習到達目標は到達することが必須である目標(必須目標)と到達することが望ましい目標(望ましい目標)に分けて表1のように記載した。
【作成過程】
 本学習目標の作成は平成21年9月から平成22年3月まで行われた。デルファイ変法は、Fitchらによるマニュアル、Peas(PM2008)によるカリキュラムの作成手順、笹原らによる緩和ケアチームの基準(JPSM2009)の作成手順を参考とした。
1)準備段階:情報の収集と学習到達目標のカテゴリー作成およびアイテムプール
国内外の緩和ケア卒前カリキュラムのレビューおよび当該分野における先行研究の知見を整理し、文献レビューに基づいて、研究者によって緩和ケア卒前カリキュラムの構造、カテゴリー、各カテゴリーの項目(目標)数を暫定的に決定。研究者とデルファイメンバーのうち選定された8名でブレーンストーミングを行い各カテゴリーのアイテム(学習到達目標)を起案し、緩和ケア卒前学習到達目標(案)を作成した。
全国80大学医学部の緩和ケア教育担当者に対して①で作成された大学医学部・医科大学卒前教育における緩和ケアの学習到達目標(案)を送付しその適切性と難易度を評価していただくとともに、意見、追加項目がないかを確認し、61大学から返送があった。
②の結果から学習到達目標の再吟味を行い、大学医学部・医科大学卒前教育における緩和ケアの学習到達目標(案)および調査票をリバイスし、第1回デルファイ調査案を作成した。
2)第1段階:同意の程度の測定
(1)対象
 以下の32名を対象とした。医学部における緩和ケア教育実践者の意見を含める必要性を考え、①医学部における緩和ケア教育責任者(50%)、②各関連団体からの代表(25%)(日本サイコオンコロジー学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本家庭医療学会、日本老年医学会、日本がん看護学会、日本ホスピス緩和ケア協会、日本医学教育学会) ③日本緩和医療学会により選出された緩和ケアのエキスパート(12.5%) ④医学生および患者団体からの代表を対象者(12.5%)とする。
(2)データ収集
 郵送法にて調査票を配布した。各項目の内容の適切性を必須―望ましい―やや不要―不要の4段階で、項目修正の参考としてその難易度をやさしすぎる―適切―やや難しい―難しすぎるの4段階で評価した。
(3)分析方法
 各項目の値の分布を算出した。それぞれの項目が75%以上の一致が見られたときに、その項目についての合意が得られたものとした。またそれぞれ50〜75%の一致が見られたものは斜体で記載した。
(4)パネルミーティング
 第1段階で得られた全体の回答および個々の回答、自由記載の内容、討論点を記載した資料を配布し、不一致が見られた点や難易度が高いと評価された点について討論した。当日参加できない対象者には、事前に上記と同様の資料を郵送またはメールで配布し、討論点について自由記載を求めるこことした。パネルミーティングでの議論内容をもとに研究グループ内で討議し、項目の削除、修正、追加を行った。
3)同意の程度の確認(2回目)
 同様の同意の程度の確認のための調査を行った。合意が得られない項目については、研究グループで討議のうえ、削除または両論併記とした。

 本研究は平成21年度厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業『がん医療の均てん化に資する緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究』ならびに平成22年度厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業『緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究』(研究代表者:木澤義之)の研究として作成された。

表1:学習到達目標の記載のしかた
到達することが必須である目標 到達することが望ましい目標
  • ここには全ての医学生が修得することが望ましい学習到達目標を記述した。
  • 75%以上のパネルメンバーが必須と判断した学習到達目標を記載
  • 斜体で記述したものは50-75%以上のパネルメンバーが必須と答え、かつ75%以上が必須もしくは望ましいと回答した学習到達目標である
  • ここには全ての医学生が修得することが望ましい学習到達目標を記述した。
  • 50%未満のパネルメンバーが必須と回答し、かつ75%以上が必須もしくは望ましいと回答したものを記載
  • 斜体で記述したものは50%未満のパネルメンバーが必須と回答し、かつ50-75%が必須もしくは望ましいと回答した学習到達目標である
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