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緩和ケアチームワークショップ

研究の目的

 2005年に策定された第3次対がん10か年総合戦略に基づき、がん医療の均てん化を目指してがん連携診療拠点病院が指定されており、その数は2009年4月現在で375施設にのぼる。がん連携診療拠点病院の指定要件として、一般病棟で緩和医療を提供する体制の整備が含まれ、これは主として緩和ケアチームがその機能を担うとされている。そのような背景から、がん診療連携拠点病院の増加に伴い、緩和ケアチームの数も急激に増加している。
 わが国での緩和ケアチームの活動は、いくつかの先駆的な施設はあったものの、2002年の緩和ケア診療加算の新設を機に本格的に始まったばかりである。緩和ケア診療加算では、施設や構成員などの体制に関する要件を規定しているが、緩和ケアチームがどのような活動をするのかに関する具体的な指針はない。つまり、がん診療連携拠点病院の増加に伴い新たに設置された緩和ケアチームの多くは、明確な指針がないまま活動を余儀なくされているのが現状である。
 緩和ケアチームの量的拡充が図られつつある今、今後は緩和ケアチームの活動の質を保証していくことが大きな課題となっている。 
 また、都道府県の「がん対策推進基本計画」に基づき、各拠点病院の役割として、がん診療に携わるすべての医師に対して緩和医療の基本的な研修を行うこととあり、その具体的な活動の体制作りが課題となっている。

 以上の状況に鑑み、緩和ケアチームの質の向上のため、緩和ケアチームワークショップのプログラムを作成し、がん診療連携拠点病院の緩和ケアチームを主な対象として開催し、その評価を明らかにすることを目的に、国立がんセンターがん対策情報センター研修企画課と協力して緩和ケアワークショップを開催した。

1) ワークショップのプログラムの開発
 緩和ケアチームワークショップとして、研究者間の討議により1回16チーム64名を対象とした1日間の参加型のワークショッププログラムが作成された。
表1

プログラム内容

時間

Key Note Speech

15分

アイスブレーキング

30分

緩和ケアチームの抱える問題点
(グループワーク)

95分

困難なコンサルテーションへの対応
(グループワーク・ロールプレイ)

110分

緩和ケアチーム:活動の実際
(レクチャー)

40分

緩和ケアチーム:明日への課題
(グループワーク)

100分

以下に、プログラム内容(表1)について簡単に述べる。

(1) Key Note Speech
 ワークショップ全体の説明、およびファシリテーターの紹介を行う。
(2) アイスブレーキング
 参加者同士の親睦を図り、各参加施設の概要を理解するため、他己紹介および施設紹介を行う。
(3) 緩和ケアチームの抱える問題点
 緩和ケアチームが院内で発展し、質の高い緩和ケアを提供するうえでの問題点を明らかにすることを目的とする。方法は、7、8名の小グループに分かれ、各個人がカードに緩和ケアチームの問題点を記入する。KJ法を用い、そのカードを類似性に従ってまとめ、その各まとまりを代表するような名前をつける。その後、各小グループで互いに発表し討論する。
(4) 困難なコンサルテーションへの対応
 コンサルテーションのプロセスで困った場合の対応の仕方、およびコンサルテーション診療の基本を学習することを目的とする。方法は、まず困難なコンサルテーション場面に関するシナリオを見ながらトリガービデオを視聴する。シナリオの問題点を小グループで話し合った上で、緩和ケアチームの対応をどう修正するかを検討し、新しいシナリオを作成する。新しいシナリオに基づき、小グループ単位でロールプレイを行い、フィードバックを行う。
(5) 緩和ケアチーム:活動の実際
 緩和ケアチームの実際の活動状況を理解することを目的とする。具体的には、ファシリテーター2名が、「緩和ケアチームの立ち上げ方」や「緩和ケアチームにおける薬剤師の役割」など、特定のトピックについて講義を行う。
(6) 緩和ケアチーム明日への課題
 各緩和ケアチームの課題と目標を明らかにするとともに、目標達成のための具体的行動計画を検討することを目的とする。方法は、各緩和ケアチームが今後2年で達成したい目標を立て、それをどのように実行するかを検討する。2つの緩和ケアチームがペアになり、それぞれの目標と行動計画について意見交換後、模造紙に清書する。互いに目標と行動計画を発表し、討論する。
 ワークショップは、参加者を4つのグループに分け、それぞれのグループにファシリテーターが2、3名入るようにした。
2)ワークショップの評価
 ワークショップ終了後、参加者全員を対象とし、アンケート調査を行った。調査内容は、各セッションやワークショップ全体、ファシリテーターの有用性などに関する8項目をたずねた。さらに、職種や臨床経験年数などに関する個人背景5項目もたずねた。最後に、ワークショップに関する意見および感想を自由記載にて求めた。
3) ワークショップの開催
 本年度は浜松において研究班独自に、東京、大阪、福岡において国立がんセンターがん対策情報センターとの共催により計4回開催した。
(1) 東京でのワークショップ
 平成19年11月18日(日)に、厚生労働省講堂において開催した。参加者は15施設60名であった。参加職種の内訳は、医師22名、看護師16名、薬剤師14名、心理士5名であった。参加者全体の臨床経験年数は中央値16年(範囲0.7-30年)、緩和ケアチームでの活動経験年数は中央値1.3(0-7年)であった。緩和ケアチームでの活動形態は、専従5名、専任46名、活動前6名であった。
(2) 大阪でのワークショップ
 平成20年1月13日(日)に、天満研修センターにて開催した。参加者は14施設56名であった。参加職種の内訳は、医師25名、看護師13名、薬剤師14名、心理士3名であった。参加者全体の臨床経験年数は中央値15年(範囲0.9-40年)、緩和ケアチームでの活動経験年数は中央値1.5(0.5-5.2年)であった。緩和ケアチームでの活動形態は、専従6名、専任45名、活動前4名であった。
(3) 浜松でのワークショップ
 平成20年2月17日(日)に、浜松医科大学講義実習棟にて開催した。参加者は15施設58名であった。参加職種の内訳は、医師16名、看護師21名、薬剤師12名、心理士9名であった。参加者全体の臨床経験年数は中央値16年(範囲2-30年)、緩和ケアチームでの活動経験年数は中央値1.7(0-6年)であった。緩和ケアチームでの活動形態は、専従5名、専任41名、活動前10名であった。
(4) 福岡でのワークショップ
 平成20年2月24日(日)に、ももちパレスにて開催した。参加者は14施設56名であった。参加職種の内訳は、医師25名、看護師14名、薬剤師14名、心理士3名であった。参加者全体の臨床経験年数は中央値16年(範囲1-32年)、緩和ケアチームでの活動経験年数は中央値1.4(0-5年)であった。緩和ケアチームでの活動形態は、専従8名、専任45名、活動前2名であった。
4) ワークショップの評価
(1) 東京でのワークショップ評価
 回収数57(回収率95%)であった。ワークショップ全体の評価として、「すごく役立つ」と回答した者は28名(49%)であり、「まあ役立つ」も含めると56名(98%)であった。また、ワークショップに「満足」と回答した者は33名(58%)であり、「まあ満足」も含めると、55名(96%)であった。
(2) 大阪でのワークショップ評価
 回収数55(回収率98%)であった。ワークショップ全体の評価として、「すごく役立つ」と回答した者は26名(47%)であり、「まあ役立つ」も含めると53名(96%)であった。また、ワークショップに「満足」と回答した者は31名(56%)であり、「まあ満足」も含めると、52名(94%)であった。
(3) 浜松でのワークショップ評価
 回収数58(回収率100%)であった。ワークショップ全体の評価として、「すごく役立つ」と回答した者は32名(55%)であり、「まあ役立つ」も含めると57名(98%)であった。また、ワークショップに「満足」と回答した者は37名(64%)であり、「まあ満足」も含めると、56名(98%)であった。
(4) 福岡でのワークショップ評価
 回収数56(回収率100%)であった。ワークショップ全体の評価として、「すごく役立つ」と回答した者は35名(66%)であり、「まあ役立つ」も含めると52名(98%)であった。また、ワークショップに「満足」と回答した者は35名(65%)であり、「まあ満足」も含めると、52名(96%)であった。
(5) 共通してみられた自由記載の内容
 肯定的な内容としては、「参加型だったため、楽しく深く学ぶことができた」「実践に役立ちそうな内容だった」「普段、緩和ケアチームのメンバー同士で向き合ってじっくり話し合うことがないため、よい機会となった」「他施設の状況が理解できた」「他施設の人と交流を図ることができた」などがあった。否定的な内容としては、「全体的に時間が足りない」「他施設の具体的な活動状況をもっと知りたかった」「職種ごとに問題点を話し合えるとよい」「緩和ケアチームの具体的な活動の仕方を、症例を通して学びたかった」などがあった。
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